ワトーはなぜあんな小さな羽で飛べるのか?

この記事は管理人が『スター・ウォーズ完全基礎講座<エピソード I 篇>』に記載した内容を改定したものです。内容的には『エピソード I』公開当時のままなので、最新の設定に反する記述が含まれているかもしれません。予めご了承ください。

羽ばたくワトー
羽ばたくワトー

アナキンとシミの主人であるトイダリアンのワトーは、『ファントム・メナス』においてスター・ウォーズの世界に初めて登場した。そして、現在のところ唯一の「自力で空を飛ぶ」知的生命体である[★1]。我々の世界でも、大空を飛ぶことは太古の昔からの夢であった。これはスター・ウォーズ・ユニバースに住む人々にとっても同じことだろう。しかし、その人類が長年にわたって抱き続けていた夢を、ワトーはいとも簡単に、自分だけの力でやってのけてしまったのだ。ここではその神秘的ともいえるメカニズムについて考察してみたい。

★1・・・その後、『クローンの攻撃』に自力飛行ができる第2の種族としてジオノーシアンが登場した。

我々の世界において、自力で空を飛べる生物としてまず思いつくのは鳥類と昆虫である。この両者の共通点は言うまでもなく翼が生えていることだ。当然、彼らは飛ぶためにこの翼を利用している。そのメカニズムはいたって単純であり、自分の体重にかかる重力と、大気中で翼を羽ばたかせることによって生じる風圧の反作用とがつり合った時点で宙に浮くことができる。一般に大きな翼を持ち、それにあわせて翼の筋力も強い鳥類は、1回の羽ばたきによって押しのける大気の量が多いために浮遊することができ、逆に翼の小さな昆虫は単位時間あたりに羽ばたく回数を多くすることによって浮遊するための力を増大させている。

カブトムシの羽ばたき
カブトムシの羽ばたき

さて、ワトーにも鳥や昆虫と同じように翼が生えている。当然、彼も自慢の翼を使って空を飛んでいる。彼が住んでいるタトゥイーンはあきらかに標準的な重力環境の惑星であり、したがって、浮力に関しては物理学的には地球上と同じ法則が成り立っているものと思われる。だが、ワトーの身長は約1.4メートル、体重は定かではないが、身長の大きさから推測するに20キロほどはあるだろう。それに対して翼の大きさは、両翼を広げた状態で最大1メートルほどと目算される。つまり、大きさ的にはあきらかに不足していると言わざるを得ない。一方で羽ばたきの回数に着目してみると、確かに激しく動いてはいるが、我々人間の目でも羽ばたいていることが確認できる程度でしかないし、とても強靭な筋力があるようには見えない。ちょうどカブトムシが飛んでいる姿を思い出してみるといい。彼らはとても人間の動体視力では確認できないほどの頻度で翼を羽ばたかせている。だからこそ、あの巨体を貧弱な翼で持ち上げることができるのだ。つまり、ワトーが飛んでいることは我々の知る物理現象としてはあり得ないことなのである。

では、いったいなぜ飛ぶことができるのだろうか?基本に返って考えてみると、浮遊するためには単に比重が大気よりも軽ければいいのだという結論を導くことができる。ワトーの体重は予想外に軽いのかもしれない。だが、一般的な有機生命体である以上おのずと限界があり、それをカバーするためには大気より極端に比重の軽い物質を大量に含んでいる必要がある。あの身体でそれが可能な場所 --- そう、あの腹に秘密があるのだ!おそらくワトーのあのふくれた腹の中には魚の浮き袋と似た構造の器官が隠されており、水素ガスのような比重の軽い気体が詰まっているのだろう。以後、これを「ワトー袋」と呼ぶことにする。

ワトーの断面図
ワトーの断面図

また、それに加えて重要なのがワトーの気性の激しさである。彼は短気でいつも怒っている。「ワトー脳」で形成された怒りが生み出す熱エネルギーが常時腹部のワトー袋へと放熱され、膨張することによってさらに体全体の比重を下げているのだ。そして、「ワトー羽」で腹をあおぐことによって適時冷却も行い、ワトー袋で熱の対流を起こすことによってあの安定した浮遊状態をつくり出しているのである。ワトー袋、ワトー脳、ワトー羽の組み合わせはまさに生命が作り出した神秘の極限といえよう。

以上の仮説を肯定する要素はほかにもある。トイダリアンの本来の出身惑星は不明だが、少なくともワトーはタトゥイーンで生まれたことが明らかになっている[★2]。しかし、同種の生物は全く登場していない。これはおそらく、トイダリアン特有のワトー袋が極めて爆発性の高い危険な器官であることに起因しているのだろう。何かしらの原因で1人が爆発・炎上すると、近くにいるトイダリアンも次々と誘爆を引き起こし、一瞬にして惑星は崩壊、運がよくても死の荒野と化してしまうのだ。つまり、ワトー袋の存在ゆえに、彼らは群れることができないのである。ワトーの奴隷であるスカイウォーカー親子には体内に爆弾が埋め込まれているというが、主人である彼は大空を飛ぶ自由と引き換えに、もっとおそろしい爆弾を抱えていることになる。実に皮肉な運命ではないか。『エピソードII』以降で彼が再登場し、死亡するようなストーリー展開があるとすれば、我々はデス・スターやオルデランの爆発にも負けない、ワトーの壮絶な最期を目のあたりにすることになるだろう・・・。

★2・・・その後、トイダリアンの起源は惑星トイダリアであることが設定され、ワトーの出身もこの惑星に設定が変更されている。

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