クラウズ・ヴァンデンギャント
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解説
非合法な密輸業界での成功は、概ね所有する宇宙船の性能によって左右されることになる。しかし、禁制品の密輸そのものが違法行為であるため、船に対する非合法な改造はすべて巧妙に隠す必要がある。このような改造を行ってくれるアウトロー・テクは陽の当たらない宇宙港や惑星にひっそりと拠点を構えており、そこでは疑いを抱かず、十分なクレジットを持ったパイロットたちだけが軽貨物船に軍事仕様の部品を取り付けることができるのだ。
こうしたアウトロー・テクの中でも最も信頼されている1人が、単にドクと呼ばれている人物である。彼はその伝説的な修理と改造の技術によって、帝国軍のお尋ね者となっていた。銀河内乱の初期の頃、ドクは隠れ家を求めて企業セクターに逃避し、若く美しい娘ジェッサと共にアウトロー・テクの拠点を築いたのだった。
本名をクラウズ・ヴァンデンギャントというドクは、裕福な出版社の重役の息子として生まれた。父親を早くに亡くし、母親のカーミラに溺愛された彼は、コルサントで贅沢な暮らしを謳歌していた。だが、好奇心旺盛な青年にとって、これは気を狂わせるほどの退屈な日々でしかなかったのだ。
ある日、クラウズは母や使用人が彼に嫌いな食べ物を食べさせようとすることに反発し、自分のドロイドに嫌いな食べ物を拒否するようなプログラムを入力した。母と家庭教師はそれをクラウズの新しい才能だと認識し、さっそく教育内容の再編成を行った。そして家族の巨万の富によって最高の教育を受けたクラウズは、既に突出していた技術的才能をさらに向上させたのである。
やがてクラウズはアルクヘロダイン・プロパルション社に入社したが、世間知らずだった青年はそこで企業の利益最優先主義による手抜きの実態を知り、仰天することになる。彼の再三の警告にも関わらず、会社は利益を求めて欠陥品であるアザリア66の発売を認可した。だが、当然のように不完全な製品であることが発覚し、数多くの事故を誘発してしまう。誰かに責任を負わせなければならなくなったアルクヘロダインの上層幹部は、全責任をヴァンデンギャントに擦り付け、数回に及ぶ法廷闘争の末、彼の一家を破産に追い込んだのである。後にアルクヘロダイン社も倒産したが、それはクラウズがいなくなったからに他ならなかった。
ブラックリストに載せられ信用を失ったヴァンデンギャントはドクと名乗り、宇宙パイロットの文化がひしめく暗黒街をあてもなく彷徨うことになった。やがて企業セクターに流れ着いた彼は、そこでアウトロー・テクのシャードラと出会い、恋に落ちた。後に、彼らはこの外れた世界で最も繁盛したメカニック工場を設立することになるのだ。
しかし、ドクは愛するシャードラを燃料ダンプの爆発事故によって失ってしまう。彼は大いに落胆したが、1人娘のジェッサの存在が唯一の心の支えとなっていた。父親であることは機械工であるよりもずっと骨の折れる仕事だったが、それでもドクは娘の教育に専念し、自分の持つすべての知識を彼女に伝授したのである。ついにはジェッサも父親に負けない才能を開花させ、親子でアウトロー・テクの仕事を大いに繁盛させた。2人はもはや密輸業者から反乱同盟軍に至るまで、すべての人々にとってなくてはならない存在となったのだ。
やがてドクの評判は企業セクター共同体(CSA)の保安警察にまで届くようになり、ついに違法改造の罪で逮捕されてしまう。彼は辺境の惑星マイタスVIIにあるスターズ・エンド刑務所に投獄された。しかし、ドクの失踪はハン・ソロを英雄的な冒険に駆り立てた。ドクにたびたび<ミレニアム・ファルコン>の修理を依頼していたハンは、ジェッサと共にドクを救出する決意をしたのである。そして、ハンとその仲間たちはCSAの施設から多くの政治犯たちを救出することに成功したのだった。